第8章 激裏■夢は終わらない■狼66号と兎77号
警戒心ゼロのをここに置いておけば他の肉食獣にやられる、ホラ今もぽかんと俺を見上げ得る子兎の危機感の無さな。
他の奴に食われて死なれるのはなんとも夢見が悪いしな。
……少し面倒くせえが。
「俺は66号、ゾンビマンだ。この辺にひとりというか一匹でうろついてりゃお前みたいなガキはあっという間に死ぬぜ、俺に着いてこいよ。世話してやる」
手を延ばすとその手をじっと見る。そう言われて俺に危機感でも覚えたか?
延ばした手から俺の顔に視線を向けたは、俺の手を取って立ち上がった。あどけない笑みを浮かべた背の低い子兎は大きな耳を動きに合わせてぴくぴくと動かしている。
『……じゃあ、ゾンビマンに着いてく!』
俺はその小さな手を引いて、ふわふわとした尻尾の付け根辺りをぽりぽりと掻いた。
……握った手。それは柔らかくて小さな手だった。
獲物の命が奪われていく時の冷めていく温もりじゃねえ。俺の中で初めて経験する例えるモンのない、温もりだった。
「くれぐれも逸れるんじゃねえぞ、。じゃねえと悪い狼に食われちまうぜ?」
『…うん。ゾンビマンは悪い狼さんなんかじゃない、んだよね?こんなに優しいんだもん』
──表面上は優しいフリして実際は騙してる悪い狼なんだがなあ…。本当に調子の狂うやつだ。
はあ、とため息が出る。小さな手を掴んでその場を離れていった。
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カン、と切り株の上で、斧で真っ二つになった薪が左右に転がり落ちる。それらを掴んで山になっている薪に投げる。ある程度割ったら乾燥棚に運ぶからまだテキトーに扱っていりゃ良い。
次に割る丸太に少し屈み手を延ばした所で、草を踏みしめ、砂利を鳴らしながら走り寄って来る音がする。
まーたあのお転婆娘が暴れてんのか、と丸太に延ばす手を引っ込めてその場に立つ。
『ゾンビマン!』
「なんだ、騒がしいな……、」
人にして成人くらいにはなったというのにちょこまかとする。拾ってきた時も活発的ではあったが、いくらか成長してもこれか。