第7章 激裏■捕食者はどっち?■狼77号と兎66号
「見つけたぜ、77号」
『きゃああっ!』
閉めようにも内側には取っ手なんて無くて外側から簡単に開けられてしまった。
短い爪じゃどうにも出来ない。
狼でありながら、兎に怯えて物陰に縮こまるなんて、狼達に笑われてしまう。けれどもこの状況だったら同情されるんじゃないかなって思う程に。
……さっきのもつれたかも知れない音。靴を遠くに投げた音だったみたいで、兎はなんともずる賢い知能で私を騙したらしい。
ピシャ、と開け放たれた押入れ。しゃがんでじっと見ている兎は奥で縮こまる私を掴んで引っ張ろうとしてくる。
痛い、力強くて痛い。
待てよ…?何か忘れてない?
あっ、私は肉食獣だ。だったらこの兎を食べてしまえば良いんだ。
引っ張る腕にかぷりと齧りつく。血肉が口内に広がる。兎の肉は美味しいハズだけれど、なんだかいまいちな味がする…。
はむはむ、と牙を立てるも怒ることも抵抗もしない。殴るという行為さえしない。
視線を66号へと向けるとなんとも思って無さそうな顔でじっと見ている。
……なんだか悪い事してるみたいだな。味見程度に少し咀嚼して喉を通してしまった腕の傷口を私はぺろぺろ、と舐めた。
そしたら、66号ははは、と短く笑うのだ。
「……食事はもう済んだのかよ?」
『抵抗しないの?あんたは……食べられているんだよ?』
ちょっとお腹の空腹感が収まった気もする。美味しくないけれど。
「66号、またの名をゾンビマン。死なないからな、お前に食われたっていくらでも再生するさ」
私の抱えた腕は蒸気を出して修復されていく。
おお、本当だ。私が食べてしまったというのに何もなかったように治っちゃった…!
本当に治ったのか?その傷をすんすんと嗅ぐも、新鮮な血の匂いはしない。どういう動物実験をされたかなんて一目瞭然だ。
納得する私を置いておいて、66…ゾンビマンは目的を遂行しようとしていた。
「さて、獲物は見つかったからな、と…、」
両脇を持ち上げられて宙ぶらりん。足は床に着かない状態でゾンビマンは呼吸をやや荒げて笑う。
「ここは寝室だな?77号、いや…と言えば良いか?」
部屋を物色したんでしょう、私の名前を呼んでにやりと笑っている。そして引き寄せて唇と唇が蓋をする。食むように私の唇を甘噛みされて、こいつの血の味で満たされている私の口内を舌がまさぐっていく。