第7章 激裏■捕食者はどっち?■狼77号と兎66号
ドガッ、という2発目。一発目よりも深く食い込み、重そうに引き抜かれる斧。木製のドアは破壊される手前。
離れた場所からそろりとそこを見れば、大きく裂けたドアの穴から覗き込む血の様な瞳がこちらを覗き込んでいる。うわっ、目が合っちゃった……!
毛を逆立てて驚き、跳ねてしまった。
『きゃうっ!?』
「おーおー、居た居た。ここがお前の巣穴だな、ここなら目立たないし子育てにも良い環境だ、ここに俺も住み込むか。
ここを繁殖地とする!」
『帰れっ!あんたはもう食わんっ、見逃してやるからとっとと帰れっ!』
叫んで帰れコールをしても、ドアの向こうは楽しげに笑っている。
「おう、ここに帰る為にドアをぶっ壊してんだ」
『ここって……ここは私の家だーーっ!』
振りかぶって一撃。木片が部屋側に飛び散り、割れたドアをごついブーツで蹴り穴を広げる。ベキベキッ、ガコン、と穴を広げたドアから鍵を開け、もはや枠だけのようなドアが開けられてしまった。
もう遮るものは無い、ドア亡き巣穴から66号は家に侵入してきた。もうダメだ、と私は出入り口から奥へと逃げる。
タッタッタ…タッタ、と私の後から追いかける、ゴッゴッゴ、という重いブーツの音。
この家は狭い、逃げ切れないから必死だ。
徒歩で迫る66号から走って逃げて寝室の押入れに身を入れてシャッ!と締める。多分、見られてないハズ…!
ガタガタと震えて三角の耳を立てて襖越しの音を聴いた。
っ……ッ……ゴッ…ゴッ、ゴッ…。
どきどき。足音が近い。この部屋付近をぐるぐると回っているような音がする。
もう、この部屋だ。自身をぎゅっと抱いて諦める事を願いながら震えた。見つかってしまったら、あの草むらでの激しい交尾がここで始まってしまう。
きゅうん、じゃない!私の下半身!あんなハードなのを好んだら身が持たないっ!
ゴッゴッ、ゴッ……っ、…っ……、
『…ふぅ、』
遠ざかる足音。奥で脚をもつれさせたのが、ゴト、という音。馬鹿な兎で良かった、私が出ていったと思ってくれただろうか?それで諦めて出ていったのかな?
しかしもつれた辺りで音が無い。何かあったのかなあ……?
気になったのでそっと押入れから隙間を開けて様子を見ようとした。
その縦の細い隙間から覗こうとしたら、覗かれたのは私。目の前にはあのトレンチコートを着た赤い目の兎。