第7章 激裏■捕食者はどっち?■狼77号と兎66号
走って走って、とにかく走って。
尻尾を巻いて自分の巣穴へと逃げ帰った。もちろん、戸締まりをきっちりして。
もう懲り懲りだ、兎を食べる気分で食べようとしたのに自分が性的に食べられるだなんて。
ぶるりと体を震えさせる。なんて恐ろしい兎なんだ。自分から垂れてくる相手の体液が脚を伝う。繁殖期を目覚めさせた、兎のあいつめ。
──狼を番だと言う兎なんて、変なやつ。
少しどきりとした、ただそれだけ。脱がされた服をぎゅっと胸に抱き、流石にもう着ないとな、って着替えていく。
……初めての繁殖期、それを兎に捧げてしまった、交尾をしてしまった。私の中には66号の子種がたっぷりと入っている。兎を産んでしまったらどうしよう?それって食べられるものなんだろうか?産んで育てていったら愛着湧きそうだ。
しっかりと閉じたドアに向けて手を触れた。確か、66号と言ったか。
交尾する前にグルーミングしてくれた時、気持ちよかったなぁ……。結構、あいつの交尾…良かったかも。顔も結構好みだったかな…肉付きも……美味しそうだし。また逢えるかなあ、だなんて。
そんなおセンチな気分は乱暴なノックに壊される。
ドンドンドン、とオスの乱暴なノック。
『ひゃうっ!?』
思わず声に出して驚いてしまった。口を抑えるもきっちりと相手の大きな耳は逃すことが無く。
ドア越しに兎の声が聞こえてくる。兎は兎でも66号の声。
「おう、ここに居るな?よし、青姦が嫌だったんならそう言えよ…あ?なんでコレ、鍵閉めてんだ?開けろよ」
ガチャ、ガチャガチャガチャ、と乱暴に開けようとノアノブが壊れそうな程に回る。
口を押さえて私は恐怖した。あの鬼のようなピストンがやってくる…!
ドンッドンドン……ガンッ!ドゴ、というただ事じゃない音にドアから離れて、そのドアを見つめた。
ドアの向こう…66号は私にだろう、何か叫んでいる。
「狼式の求愛を求める儀式だかなんだか知らねえが、こっちはまだお前とヤリ足りねえんだ、ドアから離れてろよ、すぐ壊してやるからな」
メキ、という音と共にドアからひょっこり出ているのは斧の先端部分だろうか?
そんな物理をドアに与え続けたら鍵なんて意味は無い。恐ろしい兎だ…。