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【風雷暴シリーズ】ゾンビマン夢【サンプル集】

第7章 激裏■捕食者はどっち?■狼77号と兎66号


(狼77号と兎66号/ゾンビマン)
~捕食者はどっち?~

ぐうぅ~…

──お腹が減った。
空腹を訴える腹を擦り、周囲を見渡してから本能のままに走り出す。
荒野や生き物たちの穴蔵、巣箱を風を切るように駆けて狼は走っていく。その狼っていうのは私、。頭部には短く細かい銀色の毛の生え揃った耳と、腰にはふわふわの尾。遠くの生き物が発する音に気が付いてぴくん、と耳が動いた。
どこかに腹を満たせる獲物は居ないか、と周囲を見渡しながら小動物を探した。確かこの辺から聴こえた気がした。
きょろきょろと木々のまばらに生えた、私の隠れ家がやや近い森で揺れ動く黒くて長いモノ。背を屈めて影から覗いた。

『おっ……あの黒くて長い耳は……うさぎだな?丁度良い…、』

舌なめずりをしながら近付く。美味しそうな獲物、私の様な人型の…兎のようだった。
近付けば不用心にも煙を吹かしている。横顔から判断するに顔や手は白く、目は赤いのに耳は黒いうさぎがそこにいた。白兎じゃない、髪色が黒だから耳が黒いのか。
……隠れながらその兎の顔をまじまじと見てみる。眉間にシワを寄せて不機嫌そうだ。私があんたを食べてしまえばその不機嫌もどっかに消えてしまうだろうに。

「……?」

私に気が付いたようだ。捕食者たる肉食獣、狼の私に。
脚は早いから後ろから攻め込まなくても良いや、正面から行こう。
私は草むらからガサ、と立ち上がり兎に近付いた。首から齧りつくか、耳からか。服はなんだか頑丈そうで胴体を守られてる。

『お前、美味そうだな。私の血肉になってもらうとしようか』

ピ、と指差して言うとそのうさぎは私をじとーっとした視線を向けている。
最期に見る捕食者の顔を見ているのか。逃げる様子が無かった。変な兎…。逃げ出すために背を向けたならば、飛びついて頸動脈に犬歯を突き立ててやろう。

兎は煙草を靴の裏で揉み消して捨てる。そして私の顔をじっと見てすんすん、とその場で鼻を鳴らしている。

「……お前、メスか?」
『オスに食われたかった?屈強なオスに。でも残念でした、あんたは私のモノだ』

がばっ、と兎に飛びつく。兎は飛び掛かられても無抵抗だった。食べられる事を希望しているのか知らないけれど、腹が満たせるならどうでも良い……そう、些細なこと。
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