第6章 ■パズル■
『もー、2本持ってきたんだからそっち飲んでよ』
「お前が開けて、なおかつ口つけた後だからこっちの方が良い」
『いじめっ子のガキかっ!間接キスで喜んじゃうガキンチョかっ!』
「ほら、パズル、手ェ止まってるぜ」
この人は何を楽しんでんだか。
私の視界の邪魔にならない様に回された腕で、残りの野菜ジュースを飲んでる音を聞きながら、小さいパーツを手に取ってまたパコ、とはめ込んでいく。
少しだけ抱きしめる腕に開放された、と思ったら片腕が飲み終えたらしい紙パックをゴミ箱に投げられていく。私のもう一対の腕はフリーダムのようです、2対の腕の神様。
白いパーツに赤い目が付いてる。これはゾンビマンかな?と机に置いて他のパーツを探していく。
「俺の顔か?確か、白パーツの所に纏めたと思ったが…」
『さんきゅ……っていっても白パーツ自体が多いんだよねぇ…私もゾンビマンも、フラッシュに番犬マンに…』
カラー別の山を将棋崩しみたいに指先で崩していれば、またもおじゃま虫タイムの到来だった。
両腕がクロスするように、両胸を持ち上げて下げてを繰り返して胸がうるさい。ドキドキとかじゃなくて、わざとたふたふと振動を与えるからやかましい。
『あのー?真面目にして下さいません?さっきから定期的に邪魔に入ってるけれど、何がしたいのかな?』
「よくぞ聞いてくれた」
『聞くまで続けてたのかよ』
聞いても続けられてるけれど。
ぎゅうっ、と背後から抱きしめられたまま(揉みながら)に左側、耳元で彼は囁く。
「机上のパズルはもう飽きた、あとは俺達のパズルをしよう」
触れるのはパズルではなく、私の下半身。コイツは…!
『朝もしたってのに一日に何度したら、まっ…まって!』
全ては計画通りなのか。
片腕が降りて下着毎ズボンがズラされようとしている。この男、このソファーで致そうとしてない?
慌てふためく私を面白がって笑うゾンビマンは呼吸が乱れていた。
「パズル…側に居られる時間が長いから良い、だっけか?良かったじゃねえか」
『中に居られる時間とは言ってないんだけれどーっ!?』
机上のパズルは完成せずとも、男女のパズルだけは完成した、午後のリビング。
この…激しい行為のせいで極小パズルのピースが数点吹っ飛んで、多分掃除機に吸い込んでしまったのをこの時の私達は知る由もなかった。