第6章 ■パズル■
冷めた視線で固まって見ていると、パンパン、と音を立ててもう一度「ここだ」と繰り返す。聴こえてるやい。
『なんで太もも?』
「太ももってか股の間だ、こう……二人羽織みてえな?腕二本ある神みてえな?」
想像付くけれど。脚を広げて座ってるからそこに入れば良いって理解も出来るけれど。
私は眉間にしわを寄せながらそんな彼に不満を伝えた。
『セクハラされる未来が私には見えます……』
「おう、そのレーダーは正しいぜ?確実にお前に手を出す」
そのソファーを立ち上がり、私はキッチンへと向かう。後ろからおーい、と呼ぶ声が聴こえたけれどいちいち返事はしない。
冷蔵庫から2本の紙パックジュースを取り出して、再びリビングへと向かうとパズルに向かい合おうとしている彼が私の気配に気が付いて振り返った。
一度止めかけた足を、またソファーへと向けて進める。ゾンビマンは私を見上げていた。
「どうした?」
『ほら、足、足』
「あ、ああ…」
少し閉じかけた脚の間に座って、机の空いたスペースに飲み物を置く。
少しだけ前傾姿勢でちっちゃなパーツを手にとって、机に置いてくるくると指先で回転させる。しましま模様…、プリズナーの衣服の部分だろうと思うけれど。
背後の男は私の見えない所で布の擦れる音を出してそのまま私の背後からぎゅっと抱きしめる。パズルをやるつもりは無いのか、両手とも私の胸や腹回り、左肩に顎を載せて私がパズルをする様子を眺めている、というか。
耳元での呼吸音と全身を包むような体温と、抱きしめられる安心感。時折、撫でるように胸を服の上から触るおじゃま虫タイム。
赤いパーツを繋げている最中で手を止めた。
「どうした?手が止まってるぜ?」
『こっちのセリフ。そっちこそ完全に手が止まってるけれど?セクハラじゃなくてパズルの方ね?』
「チッ、はいはい、やれば良いだろ…、」
ようやく手がパズルのパーツに向かい、左肩まで引き寄せてパーツを摘んでタツマキの髪の部分を繋げている。今のうちに紙パックにストロー刺そう、と1本手にとって白いストローを薄い膜にプツ、と突き刺した。
少しちゅうっ、と吸って、机に置こうとした所でさっきまでパズルをいじってた手が攫っていく。私の隣……左肩でズズ、と音と嚥下される音が数回。