第6章 ■パズル■
ゾンビマンは私の飲んでいたものを取ってストローに口を付ける。ズズ、スコーという中身が入っていない音。吸われているのは空気ばっかりで紙のボディが潰れる。
「ゴミじゃねえか」
『捨ててくれるの?ラッキー、ありがとー』
チッ、と舌打ちしてゾンビマンはゴミ箱に投げ捨てる。壁に一度当たって綺麗にゴミ箱にスコンッ、と入っていった。
投げ入れるの、あんまり外さないよなー…と見ていると、がしっと腰を引き寄せられてもう片手が私の後頭部を引き寄せた。
『んむ、』
がっつりと人の口内を舌でまさぐった後に開放された。時間にして、5秒経ったかどうか。
彼はしてやった、と言うドヤ顔で、後頭部を引き寄せてた手で私の頬を撫でる。
「今日のキスは随分と健康的な味だな?」
『……自分が飲めなかったからって口移しみたいなことしないの。それに野菜ジュースなら冷蔵庫にまだあるけれど飲みたいなら持ってくる?』
ゾンビマンは横顔を見せてもう一度パズルに向き直った。細かいパーツとにらめっこだ。
今度は色ごとに指先で寄せ始めたから、ちょっとパズルの攻略の趣向を変えてきたみたいだ。
「要らねえ。お前が飲むならまたさっきみたいにして味見しとくが」
『キスしたいだけでは?』
「ああ、ただしたいだけだ、おい」
じっと見てると振り向く赤い双眼。
口元には少し笑みを浮かべていた。
「お前も手伝ってくれよ、俺ばっか見てねえでさ」
『……気付いてたの?』
なんだ、バレてたんだ。そういうの勘付きやすいんだろうか、調査ばっかりする専門分野の人は。
ゾンビマンは自身の膝に肘を突いて頬杖で私を見上げる。
「火が着いちまうくらいに熱い視線を送られちゃあスルーも出来ねえ。俺が良い男なのは十分分かってるだろ?ならお前もこの難題、一緒に解いて行こうぜ」
熱い視線って…今のゾンビマンの視線こそが熱い視線なんだけれど。
まあ、暇してるし面倒くさそうだけれど始まってしまえば楽しいだろうし、と私は協力してやろう、とパズルを見る。
『ん、手伝ってあげる』
「よし、じゃあこっちに座れ」
ゾンビマンの右隣に座ってた私に言うので、左に座れば良いのかな?とゾンビマンを見れば彼は自身の太ももをぺしぺしと叩いている。なぜそこに座らないといけないのか。