第5章 ■セイントバレンタインデー(if)■
想像がドンピシャだったので焦る。エスパーをここで発揮しなくたって良いじゃない!タツマキもそう思ってるんでしょ、とタツマキを見ると目が合った瞬間にそらす。
『タツマキも……私側では…?』
「べっ、別に作るわけじゃないもの!この時期は美味しそうなもの売ってるから買って食べるくらいよっ!
それよりもほら、ちゃっちゃと作り始めなさいよ」
得意げに、きっと毎年作って経験値を上げているであろうフブキは指導を始めた。
「じゃあ、この高級板チョコを細かく……──」
…。
……。
そして出来上がったチョコレートを使用したブラウニー。
味見をすると非常に美味しい。これは高級板チョコと言っていたから、それの味なんじゃないだろうか?えっ、フブキパティシエここに誕生か?
もぐもぐと口を動かしながらフブキを見るとどう?と感想を聞いてくる。
『フブキパティシエ……ここに洋菓子店を作りましょう、毎日通うからっ!』
「……ヒーローは降りないわよ?まあ、良い出来になったんじゃないかしら」
ラッピングをして、完成。
そしてフブキはその沢山の中の3つを取り出す。
「リリー、はい少し早いけれど」
「はいっ!ありがとうございます、フブキ様!では、私からはこちらで!」
「ふふっ、中身は一緒でも作ったのは別だものね。あなたのブラウニー楽しみにしてるわね。
はい、これはお姉ちゃんとあなたに。姉妹チョコと友チョコと言えば良いかしら?」
「あら、ありがとう。姉だものね、当然よね?私からはこれを贈るわ」
タツマキはタツマキが作ったものをフブキに。
わあ、フブキに貰ってしまった。けれども私には返せるものが無い。ゾンビマンの分だけ作っていたから、ここまで気が付かなかった。
そろそろと手を出して受け取る。
『お返しはホワイトデーに…!』
「期待してるわよ?既製品じゃなくて作ってみなさいね」
『……期待しないでください…』
にっこりと企てる笑み。
フブキはこの為にイキイキしてたんだな、と今思い知る。
「初めての恋人への贈り物の様子、ちゃーんと報告して頂戴ね?さもないとホワイトデーは原材料3倍返しで作って貰うわ」
『ヒェッ…』