第5章 ■セイントバレンタインデー(if)■
「もうっ!だから私が言いたいのは、あなたがゾンビマンにチョコレートを贈らないのって話よっ!?恋人でしょ?愛情あるでしょ?」
『ま、まあ…』
愛情は、あるよ?それは。うんうんと頷くもフブキは続ける。
「あなた達恋人はご飯食べてえっちな事するための恋人じゃないでしょっ!?つがいとかセフレじゃないでしょうっ!?」
『す、ストーップ!場所っ!』
店内で恥ずかしい事を言うんじゃない、と発言者のフブキは赤くならずとも言われた私が真っ赤になってしまった。
溶けかけのバニラアイスを一口食べてクールダウン、クールダウン……。
『まあ、ちょくちょく会うし、ご飯食べるし……今更チョコレート贈ったってあの人、さんきゅっつってただの糖分摂取するだけじゃないの?』
「あのゾンビ、会議でおやつ出されると結構食べてるもの」
「はぁー……(ロマンスもへったくれも無い……愛情はあるの?このカップルは…)」
フブキが頭を抱えてる。アイス食べたわけでも無いのにね。
ともかく!と声を上げて気合が入っているフブキは前のめりに私に言う。
「13日!フブキ組にちょっと顔出しなさい!チョコレート作りするわよ!」
『えっ…』
「面白そうね、遊びに行ってあげるわ」
──そんな話がありまして。
来る13日に私はあまりやる気の無い状態からか不運にも黒塗りの高級車に攫われてしまう…。恋人の為というやる気満々のフブキに対し監督者(監視?)タツマキが言い渡したチョコレート作りへの要求とは…、と脳内で自身の境遇を嘆きながら、フブキ組のリリーにエプロンを渡される。
仕方ない、着けるか…と、黒いエプロンを着けた。タツマキはいそいそとエプロンを装着してる。
『えー…、フブキさん、もしやこれは本格的なモノを作るのです?』
材料がチョコレートのみかと思えば調理道具やら食材やらが並べられ、パッケージになるであろう、小洒落たものが端に重ねてある。
今更なんだと言いたい顔でフブキは黒いエプロンをした。
「あなた何を作ろうと思っていたの?」
『ほら、チョコレートって溶かして固めるんでしょ?』
「……絶対にあなたレンジでチンか、お湯にぶち込んで失敗するから、最終的に既製品買って贈るタイプね」
『まっまだしてないしっ!』