第68章 事件現場3
貴方side
河内「その噂を耳にした少女の父親が、皆が止めるのをふりきり、陽が暮れようとしている森の中に入ってそのまま行方知れず…その2日後だったわ…森の中で足を滑らせ、湖に落ちて溺れた…その少女の水死体が発見されたのは…確か名前は、屋田多麻子だったかしら…」
服部「お、屋田やと?」
萌「そうよ!あんたに手紙を送ったっていう…屋田誠人の妹さんよ!」
小五郎「んじゃ、夜、森に入ったその父親っていうのも…」
萌「ええ…彼の父さんよ。未だに見つかってないわ…この森は地元の人でも迷うぐらい深いし…ひょっとしたら、彼の父さんも死羅神様に…」
小五郎「しかしな…それだけで架空の人物の仕業と決めつけるのは」
萌「わ、私だって信じてなかった…でも…でも見ちゃったのよ!夕陽で赤く染まった森の木の上で、息を潜め、歯をむき出してせせら笑う…あの白髪の化け物を!!」
服部「何やとォ!?」
小五郎「ま、まぁどーせ猿か何かと見間違えたんだろうけど…」
萌「猿なんかじゃないわ…見たのは私だけじゃないし…先週も役場の人が見たって言ってたし…」
服部「けど、おかしないか?何でその化け物に村長さんやその奥さんが殺されなアカンねん?夜、森に入ったっちゅうんか」
河内「村の再開発…日原村長はあの森の中に大きな観光施設を建てようとしたからね」
小五郎「なるほど、それで死羅神様の怒りを買ったってか?」
河内「ええ…お陰でその計画は白紙…村の英雄でもある日原村長としては、過疎化が進むこの村の事を思っての計画だったようだけど…」
服部「英雄?」
河内「あら、知らない?彼は若い頃、オリンピック陸上の日本代表の候補にあがった程の選手だったのよ?」
服部「ホー…」
河内「何の競技だったかは忘れたけど…気になるんなら行ってみる?2階にある彼の部屋に…」
☆☆
2階
服部「ホンマや…いろんな大会で優勝してるみたいやで…」
蘭「でも、何の競技か書いてないね…」
服部(ん?何でみんなメダルだけなんや。ヒモは外してしもたんやろか…?)
小五郎「しかし、この部屋もかなり荒らされてるな…」
蘭「あ、仁王様の像」
小五郎「結構重いな…ブロンズか?」
蘭「細かい細工がしてあって、よく出来てるね」