第9章 chapter9
本当に素晴らしい試合だった
蛍くんを初めて見て恋に落ちて
追いかけて合宿にまで押しかけて
応援のために東京まできた
私の初めての春高も終わるー
「お兄さん、連れてきてくださって本当にありがとうございました」
私は深々と礼をした
「歩、蛍めちゃめちゃカッコよかったね!惚れ直したんじゃない?」
努めて明るく冴子姉さんが言う
「はいっ!死ぬほどかっこよかったです!」
「くぁー!青春最高だね!帰り乗りな!私が家まで送ってあげるよ」
「ありがとうございます」
「歩私たちが片付けして荷物積み込んでる間、会えるなら蛍に少し顔見せてやりなよ」
「でも…」
試合に負けた悔しい気持ちを私がどうこうできるとは思えなかった
「行ってやって」
お兄さんもそう言って頷いてくれる。
コーチや先生からの話があった後、片付けをしている蛍くんのところに行った
蛍くんはチラッと私を見て
「東京までこさせたのに ださいよね」
と皮肉っぽく呟いた
「ううん、来てよかった。蛍くんを好きになってよかった」
蛍くんは少し笑った
「あっちに着いたらすぐ連絡して」