第9章 chapter9
絶対に落とせない第2セット
どことなく烏野応援団の空気も重い
その中でも冴子姉さんは絶対士気を落とさない
この人は田中先輩のお姉さんだけじゃなく
烏野バレー部みんなのお姉さんなんだ
私も諦めない
最後まで蛍くんを応援する
大接戦の第2セット セットポイントまであと一点
山口くんのサーブ
祈るように両手を合わせる
相手チームに返るボール
セットが上がり、小柄なスパイカー
さっき蛍くんがブロックアウトされた攻撃
蛍くんは予想していたのだろうか
瞬時にブロックの手をずらしボールを避けた
「ノー!!(触ってない)」
蛍くんの声がする
そのままスパイクはアウト
この得点で烏野は2セット目を取り返した
…すごすぎる
カッコ良すぎて息が苦しい
山口くんとハイタッチする様子を見て涙が溢れた
コートチェンジをする際、こちらを見た蛍くんは
お兄さんに向かって小さくピースサインを出した
なんだやっぱりお兄ちゃん大好きじゃん
ちょっと羨ましいな
蛍くんをこんな風に熱くさせるチームメイトもライバルもお兄さんも、バレーも…
みんなすごく調子がいい
このままもしかしたらって思ってた
第3セットも終盤
日向のスーパーレシーブが決まる
春高予選の日向、あんな動きしてなかった
きっとあの合宿だよね
急に日向がコートの中がよく見えるって言い出して
「橘は月島が好きなんだね」
って言い出したあの時
あれぐらいから日向はきっとどんどん進化してる
あれ?様子がおかしい
日向?
コート内が騒がしい
何があったの?
ベンチに座らせられる日向
みんな慌てている
どうやら日向は体調が悪いらしい
嶋田さんが車で日向を病院に連れて行くと言う
日向の損失は大きい
でも烏野の士気は衰えない
あなたたちに負けてウチの3年生の春は終わった
同じようにここで負けたら烏野の3年生のバレーは終わり
一度しか会ってないけど、蛍くんと先輩たちが
まだ一緒にバレー出来ますように…
今度は蛍くんの様子もおかしい
もう満身創痍なんだろう
でもまだ見ていたい 一秒でも長く
決して口にしないけど
あなたが大好きな仲間たちとバレーをしてほしい
そんな祈りも虚しく辛くも烏野の春はここで終わった