第6章 chapter6
!!!
「山口、先に行ってて」
人気がないところで通話ボタンを押した
「もしもし」
グスッグスッ
泣いてる?
「え、どうしたの?」
「…きしまくん…」
!!!!!
「今どこ?
すぐ行く」
何があった
僕はどうすればいい
誰かのためにこんな風に必死で走るなんて
バカみたい
君のことよく知りもしないのに
彼女がいると言ったのは、この前行った図書館の近くの公園
息を切らして駆けつけた
「ハァ ハァ どうしたの? 大丈夫?」
僕を見るなり両目からポロポロ涙を流す
僕は駆け寄り 彼女をぎゅっと抱きしめた
腕の中の彼女が小さな声で話し始めた
「ごめんね…私…パニックで…気がついたら
月島くんに電話してた」
「いいよ」
そう言ってふと見下ろすと彼女の首筋に赤い痕を見つけた
え?
なに?
咄嗟に彼女の体を引き離した
「ソレ…首…」
彼女はハッとしてその部分を押さえる
嫉妬の炎が燻り始める
「違うのこれは…あの…その」
「なに?」
「さっき国見に告白されて…断ったら…
「豹変して襲いかかってきた?それ橘さんに隙があったんじゃないの?」
違う こんなこと 言うつもりじゃないのに
「だってそうデショ? 大声出すなりなんなり そんなに怖かったなら今だって僕なんかに連絡してないでさ…ていうか僕に言ってどうしたいの」
違う 嫉妬で口から思ってもない言葉が紡がれる
彼女はとても哀しそうな顔をした
「ごめん…月島くんには分からないよね、私国見の気持ちが分かるの。ワガママな片思い、私が好きな人を欲しくてたまらないって気持ちと同じ、相手の気持ちなんて考えられないの。そう思ったら苦しくて…でもやっぱりすごく怖くて 気づいたら月島くんに連絡してた」
僕が君に対しての気持ちが何なのかとか 認めるのが怖くて
自分に対して言い訳してズルズルと引き延ばしていたけど
言わなきゃいけない 今しかない
「分かるよ…だから腹が立つ
…国見にも自分にも」