第1章 例のあの部屋シリーズ① 不死川兄弟の場合
「おいおい、布団を土足で踏むなんて、冨岡は礼儀も教えてねぇのかァ?」
「と、冨岡さんの事を悪く言うのはやめてください!」
今度は一歩も下がらず、言い返す。
冨岡はの命の恩人でもあり、師であり、敬愛する存在だ。
自分の事は馬鹿にされても彼を馬鹿にするのは、例え柱であっても許せない。
「あぁ?テメェもしかして冨岡の事が好きなのかァ?気に食わねぇぜェ…」
スパン!と、軽く足払いをしただけで、は派手にすっ転んだ。幸い布団の上だったので痛くはなかったが、早すぎて何も見えなかった事にショックが否めない。
(嘘…やばい)
布団に座り込んでいると、おあつらえ向きとばかりに、実弥がしゃがみ込む。まじまじと顔を物色する様に、その大きな瞳で見つめてきた。
「おい、玄弥!」
さっきから1人であわあわなっている玄弥は、その呼び掛けにすぐに反応できず、更に硬直してしまう。
チッと舌打ちすると、実弥は立ち上がり玄弥のところまで歩き、
「ほらよ!」
「ぐぇっ!!??」
実弥は玄弥の襟首を掴み、片手で軽々との方に投げ飛ばした。
何とかギリギリぶつからなかったものの、これで舞台は整ったのか、実弥が腕を組み仁王立ちしている。
「よし、テメェらでヤれ」
「い゛っ!?」
「五月蝿ェ…いいからヤれよォ?早くしねぇと何時まで経っても出られねぇぞ」
ギロリとひと睨みすると、面白いぐらいに素早く玄弥は姿勢をピシッと正した。
「いやいや、無理無理無理無理!!」
蛇に睨まれた蛙の様に、言わず動かずの玄弥に変わり、一生懸命首を横に振る。
すると実弥はしゃがみ込み、の頭を押さえつけると、ゼロ距離まで顔を近付けてきた。
「あァ?俺の弟が嫌いだって言うのかァ…??」
あまりの迫力にとうとう声も出なくなってしまう。それでも意思表示の為、更に早くブンブン!と首をふった。