第4章 友達
「悪趣味、だよね」
突然、隣からぽつりと呟く声がした。
びっくりして振り向くと、透けるように淡い金色の髪をした青年がこちらを見ていた。
「あんまり見るものでもないよ、行こう」
あたしが何か言葉を発する前に、青年はあたしの腕をそっと掴む。そして、人混みから遠ざかるように歩き出した。
青年は何も言わずにどんどん中心街から遠ざかる。それに従い、あたしの足も引きずられるようにして後を追う。
人影もまばらになって、さすがにどこに行くのか聞こうと思った時、青年はぴたりと足を止めた。
「えっ、ちょっ…」
あたしはぶつかりそうになって思わずのけぞる。
そしてそのままバランスを崩して地面に崩れ落ちた。
い、痛い。
久しぶりだ。この感じ。
ずっとジョナサンを抱えていたから細心の注意を払って行動していた。
あたしもやればできるじゃないの!と思ってたのに。とうとう生まれつきの長い呪縛から解き放たれたかと。そう思っていたのに…。
「いたたた…」
青年は振り返って呆れたような表情をしていた。
「なにしてるの」
あんたが、腕を引っ張るからでしょうが!とは思うけど、初対面の人にいきなり怒鳴り散らすのもどうかと思ってグッと堪える。
「手、はなしてよ」
とりあえず、むすっとした顔で言ってみる。
青年はやっと気づいたように、
「ああ、ごめんこれのせいか」
小さく呟き、手を離すのではなく逆にあたしを抱え起こした。
思ったより強い力で支えられてちょっと驚く。
「けがはない?」
青年は少しだけ気にしたように聞いてくる。
その顔がすごく幼く見えてあたしはまた驚いてしまった。