第4章 友達
気づけば海まで来ていたみたいだった。行きはあんなに遠かったのに、帰りは意外に早く着いた。
もしかして行きはあたしが迷っていただけ…とか。そんな恐ろしい考えが頭に浮かんで、慌てて振り払う。そんなことはない!…はず。
青年はおもむろに港に続く石段に腰掛けた。
「ねぇ、さっきのあれは何?」
あたしも倣って隣に腰掛けて、気になっていたことを聞いてみる。
この人が誰だか知らないけれど、少なくともあれをよく思っていないっていうところは同じだと思う。
あんな経験、生まれて初めてだった。
何かがおかしい。何かが狂っている。
なのに誰もそれを言わない奇妙さ。
みんな心の中では絶対に思っているはずなのに。
「天竜人を見るのは初めて?」
青年はそれには直接答えず、海を見つめながら逆に聞いてきた。
テンリュウビト?
天竜、人?
なんだっけ。聞いたこと、ある気がする。
頭の中の記憶という記憶をひっくり返して探して、あたしはハッと気づいた。慌ててリュックの横ポケットから「世経」を引っ張り出す。
そう。それは、ローが一番最近のった記事。
『シャボンディ諸島 最悪の世代集結』
『新世代ルーキー 世界への宣戦布告か』
確か、この記事の中で出てきた気がする。まさに"麦わらのルフィ"が喧嘩を売った相手こそが、今青年が言った"天竜人"なる人物だったはずだ。
そしてローもそれに巻き込まれていたんだった。いや、記事はほとんど共犯みたいな書き方だったけど。
「これか。こいつらのことね」
熱心に記事をもう一度読み込んでいると、気づけば青年も隣から覗き込んでいた。