第4章 友達
ミロも、マザーも、1日で大切な家族を失った。
そのことが急に現実感を持って襲いくる。
あたしが同じ立場だったら。
あたしの知らないところで、あたしの大切な人が。あの人が、もし──。
…結局、あたしは最後までマザーに返す言葉を見つけられなかった。
「──それでは、ジョナサンをよろしくお願いします」
一泊くらい泊まって行けばよいのにと言ってくれたけれど、そこまで甘える気にはなれなかった。
もっと王都を見て周りたいと思ったし、できれば市街の宿屋にも泊まってみたかった。こんなこと、一生にそうそうあることではないと思うから。
だけど、それが建前だってことは自分でもわかっていて。
あたしは、マザーの言葉に動揺したのだ。
これ以上ここにいると、自分でも知らない感情を見透かされるような気がして、それを心のどこかで恐れたの。
──あたしは、まだ、その正体を知らなくていい。
気づかない方が幸せなことだってあるんだから。
あたしはマザーの申し出を丁寧に断った。そして、ジョナサンを預かってくれることに重ねてお礼を言う。
「本当に、ありがとうございました。…またね、ジョナサン。大きくなったら会いに来るよ」
最後にもう一度マザーに頭を下げて、あたしは教会を後にした。