第4章 友達
「…ポアロ教会のシスターも、私の大切な子供でした」
マザーは突然ぽつりと呟いた。
あたしの顔から笑みがするりと落ちていくのが分かった。
──ああ、それで。
マザーのさっきの表情を思い出す。
ような、じゃない。
マザーは本当に我が子を失ったんだ。
マザーはとつとつと話し出す。
「ずっと昔、私はある島の教会にいました。その中で唯一シスターになると決めてくれた子たちです。2人だけでした。最後まで私に反抗して、結局シスターになったのは」
マザーは少し微笑んだけど、それは今までで一番悲しそうな顔に見えた。
「私はより多くの子供達を保護するために王都へ移りましたが、2人はあの頃のように自然豊かな教会で子供達を育てたいと言いました。…それを聞いて、私はとても嬉しかった…」
あたしは今日初めてマザーに会った。
だから、この人のことを何も知らない。
だけどきっと。
2人のシスターのことを本当に愛していた。いや、本当に愛しているんだと、そう思う。
それはたぶん、あたしがシスターを想うのととても似ている気持ちだ。
あの時、あたしは悲しくて悔しくておつるさんの前でものすごく泣いてしまったけれど。
「あたし、ポアロ教会を訪れた時、本当に悲しかったんです。どうしてこの子たちがこんな目に遭わないといけないのかって、そう思いました。だけど、今マザーが感じておられる哀しみを思うと…」
思ったことを口に出しながら、思わず息が詰まる。
マザーの気持ちが本当に分かるはずはないけれど、それでも悲しみの強さは想像できた。
そう思って言ったのだけれど。だけど、シスターは真剣な眼差しできっぱりと言ったのだった。
「誰かの哀しみが誰かより大きいなんて、そんなことはありませんよ。哀しみは推し量れるものではありませんし、ましてや人と比べるものでもありません。あなたが感じたことは、とても優しくて、そして尊いことだと思います」
相変わらず穏やかだったけれど、芯のある言葉。
シスターのお母さんだな。
なんとなく自然とそんな風に思った。