第4章 友達
ジョナサンを預けるためにポアロ教会に向かったこと。
ポアロ教会で起こった惨劇とその結末。
海軍に助けられたこと。
そしてまだジョナサンの預け先が決まっていないこと。
ほとんどおつるさんに話した内容と同じだったから、あの時よりスラスラと言えたと思う。
一通り聞き終えてから、マザーは目を閉じた。
表情からは何を考えているのかは分からない。
だけど、どこか辛そうで、何かに耐えているようで。
あたしはそんなマザーの様子を見ながら、両手をぎゅっと握りしめて返答を待った。
沈黙が続く。
しばらくして、やっぱりダメなのかと思い、何か言おうととした。その時、マザーはようやく口を開いた。
「そうなのですね。ポアロ教会でそんなことが。…シスターと子供たちのことは、非常に、残念でなりません」
一言一言押し出すようにして言葉を紡ぐ。
苦痛に耐えるような、大切な人を──まるで我が子を亡くしたような。そんな表情。
幾重もの苦悶のシワを刻み、マザーは深いため息をついた。そして、もう一度口を開く。
「事情はよく分かりました。その赤子ですが、我が教会で預かることにしましょう。」
「いいの、ですか?」
「ええ。はじめローリエから話があった時、うちで預かる予定だったのです。ですが、ポアロ教会でも受け入れできるとなって、ローリエはそちらにすると決めたようでした」
あの子は自然が大好きなので、とマザーは少し笑う。
そう、なんだ。
シスターはやっぱりここにも連絡をしてたのね。
安堵の息をついた。
やっとだ。
いろいろあったけど。本当にいろいろあったけど。
ようやくジョナサンの新しい家族が決まった。
腕の中のジョナサンの頬を軽く触る。
何も知らずにふわふわと笑っている。
「よかったね…」
彼はここで暮らしていく。
新しい家族と一緒に。
「ジョナサンを、どうぞ、よろしくお願いします」
深く頭を下げる。
あたしの大切な弟を。
どうか大切に育ててあげてください。