第4章 友達
マザー?シスターではなく?
それがこの教会の主人だろうか。
あたしは聞き馴染みのない言葉に不思議に思いながらも、待っている間、居住まいを正して部屋の中を観察してみた。
壊したら困るから見るだけにとどめるけれど、この部屋にある調度品は全てきれいに整えられていて、どこかの貴族の家のようだった。
さすがに大きな教会は違うんだな。
ぼんやりそんなことを思う。
お客を通すために用意されたような部屋。
マリーゴールドにはそんなものはなかった。
まあ、滅多にお客も来ないんだけれど。
しばらく待っていると、小さくノックの音がして初老の婦人が部屋に入ってきた。
この人がマザー?よね。たぶん。
近所のおばあちゃん、という表現が似合う優しげな女性だった。
「こんにちは。マリーゴールド教会と言えば、ローリエのところの子ね。はじめまして」
「はじめまして。マリーゴールド教会から来ました、アウラといいます」
慌てて立ち上がってお辞儀をする。
ローリエはシスターの名前だ。
シスターをよく知っているような口ぶり。
なんだろう?教会同士縁があるだろうから、別におかしくはないんだけれど…それよりももっと…。
少し引っかかりを覚えていると、マザーは少し微笑んでから、ゆったりとあたしに声をかけた。
「どうぞ、おかけになって」
穏やかな声だった。
「それで、わざわざ遠方よりお越しになったのはどのような御用でしょう。その腕の中の子と関係があるのかしら」
そこで少し首を傾げる。
どこまでも緩やかな調子に引っ張られて、あたしも少しだけ緊張が解けた。
そして、あたしはちょっと詰まりながら、ここに至った経緯と事情を話したのだった。