第1章 夢
街を駆け抜ける間、いろんなところから声が聞こえてきていたけど、考えるのに夢中でそれどころではなかった。
「アウラ!おはよう!」
「今日も元気だねぇ」
いつもは元気に返事をするんだけど、気さくな街の人たちの声が今は心に重い。
さっき食べたりんごも、お腹にどっしりたまって気持ち悪くなってきた。
上の空で挨拶だけは返しながら、とにかく港までひた走る。
1日思いっきり働いて忘れて、後で全部考えよう!
三日月の中腹にある港に着くまでにあと一、二回はこけるかと思ってたけど、今朝はもう地面に挨拶しないですむようだった。