第1章 夢
ライは教会の孤児仲間だ。
物心ついた時には一緒にいて、彼が16、あたしが14になるまで寝食を共にした。
それだけだったら別にいいんだけど、あいつはことあるごとに徒党を組んであたしをいじめてきたのだ。
思春期の幼気な女の子相手に多勢でって、今考えても信じらんない。下衆よ、下衆。
まあ、その度に自慢の足で逃げたり、時には返り討ちにしてきたわけだけど。
だから、貧弱はさすがに言いすぎかもしれないけど、女の子に勝てないってのはあながち嘘ではないのよね。
初めてやっつけてやった時のあの呆然とした顔は一生忘れてやるもんか。
あいつが16で島の"いいとこ"に養子として迎え入れられるまであたしたちの因縁は続いた。
なんなら、今でも良くは思っていない。
話しかけられると思わず喧嘩腰になってしまうのはその過去ゆえ、だ。
―それにしても。
今朝のヤツはあまりにもらしくなかったな。
なんて言ってたっけ。シスターから、話?
あれ、そういえば今日朝からシスターがなんか言ってなかったっけ?話があるとかなんとか…。あれか!
それから、お前、嫁のもらい手がないって…。
そこまで考えて自分でも顔から血の気が引いていくのが分かった。
今考えていることが当たってたら、それはもう最悪のシナリオだ。でも、あり得ない話じゃないのが怖いところ。
帰ったらすぐにシスターに確かめなければ。
神様、仏様、シスター様!
どうかあたしの勘が外れていますように!