第4章 友達
「な、なんて広いの…」
ミカヅキ島なら端から端まで行けるくらいの時間よ。
最後に道を聞いた人に、あの建物がそうだと言われた時はさすがに安堵のため息が出た。
教えられた場所には庭も何もなく、ただ重厚そうな鉄の門があった。どうやら王都の教会の周りは、ぐるりと背の高い塀に囲まれているようだ。
熱気に当てられ少し疲れた体を叱咤してドアベルを鳴らす。
見るからに重そうな鉄の門に対して、心配になるくらい小さな音。
これで聞こえるもんなの?
もう一度鳴らそうか迷っていると、目の前の門がゆっくりと内側に向かって開いた。
門の奥には、歳はあたしとさほど変わらなそうな、修道服に身を包んだ一人の少女が立っていた。
こういう時ってなんて言えばいいんだろう?
まずは自己紹介?
改めて考えてみると、こんな突撃訪問みたいなのはしたことがないのよね。島では全員が知り合いみたいなもんだったから。
一人おどおどしていると、少女は少し眉根を寄せたようだった。
「どちら様でいらっしゃいますか?」
「あの、ミカヅキ島から来ました。マリーゴールド教会の者です」
正直に答えながら、思わず最後の方は尻すぼみになる。
まさか入れてもらえないなんてことはないよね。
話だけでも聞いて欲しいんだけど。
あたしの心配を他所に、少女はそれを聞くとにっこり笑って頷いたのだった。
「あら、ようこそ。そんなに遠くからよくいらっしゃいました。どうぞ中にお入りになって」