第4章 友達
服を着替えてもう一度甲板に戻ると、船はちょうど本島に到着するところだった。
本島が王国の東寄りにあるから、パール島からは一晩で着いたみたい。
今度こそジョナサンを受け取って、おつるさんに別れを告げる。
「ありがとうございました。あと、これも…」
さっきもらった懸賞金50万ベリー。
リュックの中に十分詰められるくらいだったけど、生まれて初めて持つ大金に少し緊張する。
おつるさんは少し笑うと、急に真面目な顔になった。
「いいかい。これだけは覚えておきな。世の中で起きるほとんどのことは"仕方のないこと"なんだ。それを自分のせいだなんて思うのは傲りも甚だしい」
その言葉に自然と頷く。
厳しいように聞こえるけど、これはこの人の優しさだ。あたしにはそれが分かる。
「人間が一生でできることなんざ、たかが知れてるんだよ。だから、あんたはその両手でできることだけすれば十分。できなくても、それも"仕方のないこと"だ」
子供たちを助けられなかったのはとても残念だけれど、それは"仕方のないこと"だと、あたしが責を負う必要はないと言う。
もう起きてしまったことだから。
"たられば"を考え始めたらキリがない。
「それに、今回あんたはその両手でできることは達成している」
そう言っておつるさんはちらりとあたしの腕の中のジョナサンを見て笑ったのだった。
──この両手でできること。
たった一人だけ。
ジョナサンを守ること。
確かにこれだけは、できたのかもしれない。
「ありがとう…ございます」
泣き笑いのような顔になってしまったと思うけれど、やっと心からお礼を言えた気がする。
この両手にできることくらいは、取りこぼさず。
頑張ってみよう。