第4章 友達
「おはよう…ございます」
翌朝、しっかり眠りこけて目が覚めた。
「やあ少年、起きたのって…女!?」
甲板に出ると驚いた顔のガタイの良い女海兵に出くわした。
「あの…はい。一応」
帽子は血で汚れただろうから被っていない。
また何か買わないと。
「あぁ、やっと起きたかい。よく眠れたようだね」
おつるさんが少しだけ微笑んでくれる。
「はい。おかげさまで。あの、ジョナサンは…」
おつるさんはちらりと甲板に目をやる。つられて見ると、女の人たちが寄ってたかってジョナサンを取り巻いていた。
「小さいねぇ」
「赤ん坊ってこんな小さかったかしら?」
「安心しな。アンタがガキの頃はこんな可愛くないよ」
「子はかすがいって言うけれど、それもわかる気がするねぇ」
「何を分かった風に。その前にアンタ、相手がいないでしょ」
どっと笑いながら、楽しそうにジョナサンをあやす女海兵たち。くすぐられて、ジョナサンがきゃっきゃと笑い声をあげる。
なんだなんだ。
そんなに赤ちゃんが珍しい?
驚いて近寄ると、またぎょっとしたような顔をされる。
「あれ、アンタ女だったっけ?」
気付いていたのはおつるさんだけだったの?
それはそれでどうなんだろう…と思いつつ、曖昧に笑って返す。
「あの、面倒見ていただいてありがとうございました」
ジョナサンを受け取ろうとすると、後ろからおつるさんの声がした。
「あんた先に湯に入ってきな。昨日のままじゃ気持ち悪いだろう」
「……少し」
あたしはお言葉に甘えて到着するまでの間にお風呂を借りることにした。
──変な夢をみちゃったな。
夢は深層心理と言うけど、ローのせいでもなんでもないのに夢の中で謝らせるなんて、なんて図々しいんだろう。我ながら苦笑いしてしまう。
シャワーを借りてさっぱりすると、気持ちもずいぶんスッキリした。