第1章 夢
「シスターから、なんか話あったか…?」
意を決したようにあたしを見るライ。
シスター?話?なんの??
シャクシャクと音を立てながらますます顔を傾けると、ライの顔がみるみる赤くなっていく。
ふふ、なんか面白い顔。
なーにをそんな赤くなってんだか。
手元のりんごと見比べたりなんかして。
シャクシャクシャクシャク…
あたしの咀嚼音だけが絶え間なく続く。
「ま、いいや。帰ったらシスターに聞いとけ」
諦めてあたしの腕を離すライ。
顔はまだ少し赤いままだ。
なんだなんだ?珍しい顔に思わず覗き込むと。
「お前、そんな顔してたらいつまでたっても嫁のもらい手ねェな」
いつものあきれたような仏頂面に戻ってとんでもなく失礼なことを言ってきやがった。
らしくないと思って心配したらこれ!
こいつはそういう奴だった!
反撃のためにすぐさま口一杯に頬張っていたりんごを飲み込んで、
「うるさい!あんたこそ、女の子に勝てない貧弱男なんて誰も結婚してくれないよバーカ!」
そのまま脱兎の如く駆け出す。
そして3歩目で例のごとくしっかりこけた。
ほんとにしまらないな、もう!
後ろから気をつけろよーなんて聞こえるから余計に腹立たしい。罵倒してくれたほうがまだマシよ!