第4章 友達
この人は一体何を。
あたしが、何をしたって?
人を…。
──そうだ。あの男たちを。子供たちの仇を。
全て、思い出した。
雪の上に横たわる男たち。
ナイフが肉を抉った感触。
発砲と共に飛び散った赤い、鮮血。
急に目の前の女海兵の言葉が重くのしかかってきて、今度は目から熱いものが流れ落ちた。ひたすらに涙が止まらない。
あたしは何も間違ったことはしていないはずだ。
あの状況ではああするしかなかった。
だからこれは仕方のないこと。
そう思うのに。
もうあたしの両手は血で汚れてしまった。
──これもまたどうしようもないことだった。
「みんな死んじゃったんですね…」
女海兵は頷く。
あそこにはたくさんの子供たちがいたはずだ。
誰も助けられなかった。
どうせ手を汚すならみんなを助けてあげられたらよかったのに。
…ミロは。
別れたのはほんの数時間前、今朝の話。
こんなに状況が一変してしまったのに、あれからまだ1日も経っていないことに驚きだった。みんなで笑い合っていたことが懐かしい。
教会のみんなによろしくと、彼はそう言っていた。
だけど。
"教会のみんな"はもうこの世にはいない。
もう二度と、ミロは家族に会えないのだ。
彼は人生で2回、家族を失った。