第4章 友達
突然、頭の中に映像がフラッシュバックした。
真っ白な雪原と、そこに飛び散る赤い血。
身体中にまとわりつく血の臭い。
無残に殺された子供たち。
赤子の泣き声。
…そうだ、そうだった。
なんで忘れてたんだろう。
あたしはポアロ教会に着いて。
そして、教会のみんなは…。
お腹に何か気持ち悪いものが溜まって渦を巻く。
急激な吐き気が押し寄せてきて、ひどく呼吸がしにくくなった。
たぶん、その時あたしはよほど青ざめた顔をしたんだと思う。
つる中将とやらは黙ってバケツを渡してくれて、あたしは受け取った瞬間、その中に思いっきり胃の中のものを吐き出してしまった。
気持ち悪い。
全部が気持ち悪い。
血が出るんじゃないかってくらい吐けるだけ吐いても、それでも体から汚い何かが出ていかない気がした。
お腹の底に黒くて重い何かがずっと沈んでいる。
それがすごく気持ち悪くてたまらない。
「…それはもう取れないよ。アンタは人を殺したんだ」
淡々とした声が聞こえた。
同情も哀れみもない、事実だけを述べる声。
靄のかかったように思考回路が定まらない。
「もう人を殺してないころの自分には戻れない、と言ったんだ」