第24章 暴走
「───手を放せ」
冷めた声が聞こえた。
普段の彼からは考えられないほど、感情のない声。遠く離れたここからでも、背筋が寒くなるような殺気が伝わってくる。
アウラの首を絞める腕を、横から掴んだその人は、真っ直ぐにドフラミンゴを睨み、ギリギリと力を込める。
ただならぬ緊迫感。
肌に痛いほどの覇気の衝突。
息を詰めて見守っていると、ドフラミンゴは不敵な笑みを浮かべた。
「…なんだ麦わら、生きてたのか」
二人の視線が交錯した。次の瞬間。ルフィの鋭い蹴りがドフラミンゴを襲い、同時にドフラミンゴも攻撃を仕掛ける。爆発が起きたような衝撃音が響き渡った。
土煙が巻き起こり、一瞬視界が遮られる。
次に見えたのは、飛び退いたルフィが地面に降りたったところだった。その腕にぐったりとした少女を抱えて。
いつもの彼より心なしか丁寧な所作で彼女を地面に寝かせると、ドフラミンゴに向き直った。
いえ、向き直ろうとして、ふと動きを止めた。そして、ほんの僅か、見逃してしまうくらいの一瞬、こちらに視線を送る。
それだけで、彼が私たちに気づいたことを知った。
───ええ。分かったわよ、ルフィ。
彼は何も言わずに、再びドフラミンゴに向かう。
ルフィとは長い付き合いだから、彼が心底怒っていることがよく分かった。そして、彼の類まれなる戦闘本能が極限まで研ぎ澄まされていることも。
殺気を隠そうともせずドフラミンゴと対峙する姿は、いくら仲間であっても近寄りがたい雰囲気があった。一切気が抜けない命のやり取りが始まろうとしていた。刹那でも意識を逸らした方が死ぬ、そういう戦いが。
彼の集中を妨げてはいけない。だから。
───ロビン、二人を頼む。
そう、彼の声が聞こえた気がした。