第24章 暴走
「……どう、して」
頭の中が真っ白になった。
口を動かしたつもりはなかったけど、聞こえたのは掠れた自分の声だった。
心臓が、氷水に浸けられたみたいだ。
次いで、ぎゅううと凄まじい痛みが襲いくる。
──あたしが今見ているものは現実?
本当に?
ぶるぶると震え出した唇を手で押さえつけて、あたしは必死で呼吸をしようと努めた。
試したけどうまくいかなくて、薄い酸素を求めるように何度も何度も息を吸う。喉の奥で空気が詰まる音がした。
「……っ、……、」
──うそだ。
こんなのって。
どうか夢であって。
定まらない視界。
画面の中で人が倒れている。
黒いシルエット。
そして、その周りを塗りつぶすように、おびただしい量の赤が。──あの赤は。
あたしの見間違いじゃなければ。
あの赤は。
画面の中で倒れているあの人は。
「…っ、はっ……ろー、?」