第24章 暴走
「…そんなはずない。……うそだ」
ローが負けることなんて、ないんだから。
あの人がやられることなんて。
『ロー、何か言い残すことはないか?』
そう思うのに、画面の中の声はそれが現実だと言っていて。
あたしが知ってる声。
『…ないなら、最期にお前にとっておきの贈り物をやろう』
──そうか。
パンクハザードで同じように電伝虫ごしに聞いた時、この声を何故か知っていると思ったのは、ロシナンテに似ていたからだ。
画面に映ったその人の顔を見て、そんなどうでもいいことを思った。
今思えば驚くほどに、夢の中の声と同じだった。
『──おい、この島にまだいるんだろう?早く来ないと死ぬぞ」
その声の主と画面越しに目が合ったような気がした。
──死ぬ?
ローが?死………?
その言葉を聞いた瞬間、身体の震えが驚くほど自然と止まった。身体中の体温と感覚がじわじわと戻ってくる。
そして、まだぐちゃぐちゃの思考の中、漠然と思った。
──……あたし、どこかでローのことを絶対に死なないって思い込んでたんだ。
彼なら、どんなことがあっても大丈夫だって。
絶対に無事だって。
だけど。
そんなこと、あるはずないじゃないの。
この世界はいつだってこんなに残酷なのに。
──あたしの守りたいものを、大切なものを。
いつも、奪っていくじゃない。