第24章 暴走
「ナミ、これ、あたしには似合わないよ」
…こんなの着たことないし。
あからさまに顔をしかめてみせたのに、彼女はますますにっこりと、自信ありげに笑う。
「いいからいいから。試しに着てみなさいって」
ナミがその手に持ってあたしに突きつけているのは、ホルターネックのビキニ風のセットアップ。
真っ白の生地はシルクのように滑らかそうで、大胆に開いた胸元にはひらひらと涼やかなフリルがついている。ボトムスは同じく白のミニスカート。見ている分にはとっても可愛いのだけど。
でも、あたしが着るの?これを?
普段着ないような系統の服に気が引けていると、ナミは早く早くとあたしを急かす。
結局、あたしはその服を借りることにした。
ドレスローザに着く前は、ずっと変なモヤモヤが心の大半を占めていて、ナミと押し問答をする気になれなかったのだ。そもそも、貸してもらっている身で文句なんて言えないってのもあったけれど。
「や、やっぱり変じゃない…?」
試着を終えてナミの前に姿を現し、眉を垂らして尋ねてみる。
幸いなことに、胸元がぶかぶかでみっともない、ということにはならなかった。だけど、お腹にスースーと吹き抜ける風がなんとも居心地が悪い。
果たしてこれが似合っているのかどうかも分からず途方に暮れるあたしに、ナミはウインクとともにグッと親指を突き出した。…どうやら正解らしい。
──2年前ならこんな服、絶対断ってただろうな。
男装で駆け回っていたあの頃なら、きっと体の線に合わず貧相に見えたに違いない。とてもじゃないけど着れたものではない。そう考えると、ちょっとは成長したのかも…?
上を向いたナミの親指に少し勇気をもらい、あたしはその格好で甲板に出たのだった。