第24章 暴走
「…!……──っ!!アウラ!!!!」
「……は…っ!」
ゆさゆさと強く体を揺さぶられる感覚があり、あたしは知らぬ間に詰めていた息を思いっきり吐き出した。
ずいぶん遠いところまで出かけていた気がした。
体は一歩も動いていないはずなのに。
夢を見たときのように、思考がふわふわしている。だけど、身体中に残る感覚が、あたしが今知ったものが夢ではないと教えてくれていて。
閉じていた目を開くと、漆黒の世界が消え、色鮮やかな眩しい光があたしの視界を染めあげた。
あたしはあまりの眩さに少し目を細める。
そしてすぐそばに人がいることに気づいた。
「……っ、ロ、ビン?」
「あなた今、何をしたの??体は平気…!?」
あたしは驚いてロビンを見つめる。
彼女がこんなに慌てているのを、初めて見た。
彫刻のような美しい顔が、今は驚くほど青白く、その目には心配を通り越して恐怖の色さえ見えた。
「…っ、はぁ。…うん…っ、ちょっと疲れたくらい…だけど」
やっぱり、風の力を借りると、尋常ではなく体力を削られてしまう。ついでに言うと、頭も痛い。少しだけね。
これが力を使う代償なのだとしたら、ちょっとつらいものがある。体力だけならまだいいけれど、この頭痛はいくら経験しても慣れそうになかったから。
顔をしかめてその痛みに耐えていたけれど。
──ちがう!今は、それどころじゃなくて…!
目線だけを素早く動かし、今度はロビンの肩の上に彼をみつけて、あたしは急いで今"みたこと"を伝える。
「レオ…!マンシェリー姫をみつけたよ…っ!やっぱり、お城にいる!」
「本当れすか!」
「うん。地下にいたから、間違いないと思う。小さな女の子だった。…泣いていたよ」
「ああもう!世話の焼ける姫れすね!」
レオはぷりぷりと怒りながら、ロビンの肩を叩く。
「ロビランド!早くお城に向かうれす!」
「ええ、だけど」
急かすレオを横目で見て、ロビンは少し迷うそぶりを見せる。ロビンが迷う理由は分かっていた。彼女がとても優しい人だということを、あたしはもう、うんと知っているから。