第24章 暴走
地下の交易港から伸びるいくつもの通路。
半透明の路を通って、あたしはぐんぐん奥へと進む。
まるで早送りをしたみたいに一瞬で景色が変わる。意識を向けるだけで、簡単にその先へ進むことができた。
──マンシェリー姫はどこだろう?
これが、城に続く通路のはずなんだけど。
風が一際騒々しい音を運んでくる方角に狙いを定めて、あたしはひたすらその先を急いだ。だんだんと、人の気配が濃くなっていく。
──────あ、
その中にわずかに、ほんのわずかに懐かしい気配を感じた気がして、心臓が一度大きく跳ねた。
──あの人だ。
まだ確信を持てるほど強く感じたわけではないけれど、なんとなく、そんな気がした。得体の知れない不安を感じる。あたしは際限なく広げていた意識をぴたりと止めた。
体の感覚はないはずなのに、なぜか悪寒が止まらない。
…これ以上は危険だ。
ここから先は、慎重に探さなくては。
通路の真ん中で、一度立ち止まって考える。
──ええと。レオはなんて言っていたっけ。
マンシェリー姫は、トンタッタ族のお姫様で。
わがままで怒りん坊で…そして、
『きっと、泣いていると思うんれす』
──泣いている…?
思うと同時に、何とも分からぬ音の波が通り過ぎるだけだったあたしの耳に、誰かの"声"が飛び込んできた。
「……───っ」
ざわざわと雑音が混じって聞きづらいけれど。
でも、確かに、あたしの耳がその声を捉える。
──その小さな泣き声を。
それを辿って、さらに奥へ。
さらに、さらに城の奥へ。
細く薄く、慎重に意識を広げながら。
その音だけを頼りに。
そして。
「……───うぇーーーん。…もう、いやれす!!」
──みつけた!!!