第24章 暴走
どうやら、トンタッタ族のお姫様がドフラミンゴに捕まっているらしい。城の地下に監禁されている、と。
…そっか。それは心配だよね。
助けてあげなくちゃ。
泣いているお姫様をほっておけない。
「わかった。あたしに任せて」
人探しならあたしの得意分野だ。手持ち無沙汰になって意気消沈していたところに、振ってわいたうってつけの仕事。今役に立たなくて、どこで立つっていうの。
俄然やる気になって拳を握りしめていると、心配そうに眉を寄せるロビンと目が合った。
「アウラ、だけど…」
「大丈夫。ロビン。心配しないで」
ロビンが何を気にしているのかはわかる。
お城に向かって意識を広げると、"奴"の存在を拾ってしまう可能性があるからだ。さっきローにも、絶対に城の方へは意識を向けるなと言われたところ。
だけど、ドフラミンゴがいるのは城の上なんだ。マンシェリー姫が地下にいると言うなら、そこに範囲を絞って探せばいい。
今のあたしには、そのくらいの制御ができる自信があった。
「──さて」
まずはさっきの感覚を思い出すところから。
どうせここからは見えないところまで探しに行くのだから、視覚の情報はいらない。
あたしは大きく深呼吸してから、潔く両目を閉じる。
聴覚と嗅覚と触覚。
それがあれば十分。
限界まで研ぎ澄ますことに集中しないと。
……ああちがうかも。
研ぎ澄ますんじゃない。
あたしは軽く頭を振って、考えを改める。
さっきの感覚を再現するなら、
──あたしは、"風と一体となる"のだ。
空気の中に身を投じ、自分の器など忘れてしまうくらいその流れに溶け込む。ただ心地よさだけを求めて、風が受け入れてくれるがままに、全てを委ねる。
そうして初めて、"風を使う"ことができたんだ。