第3章 白と赤
あたしが逃げようとして、何とか足を動かそうと必死になっていた、その時。
カチャリ
頭の後ろで、突然、金属音がした。
硬くて冷たい何かが後頭部に当たる感触。
「おいボウズ。こんなところで何してんだ??」
息が詰まる。
体の芯が急激に冷えていくのが分かった。
頭に当たっているのは何?って、そんなの振り返らなくたって分かる。
──きっと銃だ。
1人じゃなかったの…!?!?
あたしは自分の迂闊さを呪いたくなった。
そもそも、門の外から変だって分かってたのに、教会のど真ん中までのこのこと出てくる辺りがもう、とんでもなく馬鹿だ。
しかも、殺人鬼を見つけてそのまま固まってるなんて、間抜けにもほどがある。
逃げないと、いけないのに!
「おいアニキぃ!もう一匹残ってやがったぜ」
後ろの男が部屋の中の男に向かって呼び掛けた。
「なに!?まだいやがったのか!」
ドアの向こうの小太りの男が気づいてこっちに向かってくる。
ああ、これを最悪の事態と言わず何て言う?
前と後ろ。両方に人殺し。
しかも2人とも武器を持ってる、なんて。