第3章 白と赤
シスター?
いや、違う。
ドアを開こうとした手が止まる。
階段を降りてきたのは二本のナイフを下げた小太りの男。全身に返り血を浴びている。
「くそがっ…食料も金もろくにありゃしねェな。まあいい。2、3日身を隠せれば十分だ。これだけ街から外れてりゃ気付くこともねェだろう」
ぶつぶつと何か呟いている。
とても味方とは思えない。いや、状況からして、あいつが子供たちを殺したことは間違いなかった。
そして、あたしはこの凄惨な現場がついさっき、おそらくあたしがここに来るほんの数分前に、作り上げられたものだということに気づく。
辺り一面の鮮やかな血の色が、子供たちがほんの少し前に絶命したことを雄弁に語っていた。
あたしはこくりと息をのんだ。
ここにいるのが全員とは思えないけど、他の子やシスターたちは無事だろうか??
いや……多分、おそらく、きっと。
暗い気持ちでそこまで考えた時、突然、急激な切迫感が募った。
ここで起きていることは、まだこの島の誰も知らないんじゃないだろうか。
それなら、誰かに。早く誰かに知らせないといけない…!もし、万が一教会の全員が殺されてしまったのなら、あたしが、知らせないと。
あたしはドアノブにかけていた手を引っ込めて、この場から立ち去ることを考えた。
だけど。
あれ、なんで?
何で動かないのよ、あたしの足!
その時初めて、あたしは自分がどうしようもなく震えていることに気づいたのだった。
歩くのもままならないほどに。