第23章 ゲーム(Ⅱ)
ひとしきり文句を言った後、打って変わって、コアラは真面目な顔つきになった。
「サボくん、ちょっと。またどっか行っちゃう前に報告」
「あぁ…」
サボとコアラはほとんど歳は変わらないらしい。だけど、参謀総長となるとやっぱりサボの方が上司にあたるの、かな?
革命軍にそんな指示系統があるのかは謎だけど、コアラが報告、と言ったからには、まあ、そういうことなんだろう。
サボはちらとあたしを見た。その視線の意図を汲み取って、あたしはちょっと足を早めて2人の前に出る。
「じゃ、あたし先に行ってるね」
「あまり離れるなよ」
「平気だよ。体力ももどったし」
ふりふりと軽く手を振って、歩き出す。
コアラともうちょっと話したかった気もするけれど仕方ない。革命軍の内情を知るわけにもいかないし。
あたしは話が聞こえないようにきちんと風でシャットアウトして、2人の元を離れた。
──サボがなんであんな顔してたのか、聞きそびれちゃったな。
フロアの通路を歩きながら考える。
気にしても仕方ないと思いながら、やっぱりどうしてもあのCP0と呼ばれる男たちの存在が気になった。天竜人の部下だと知ったからかもしれない。
サラの日記には、天竜人は下界を忌み嫌っていると書いてあった。一度マリージョアの下に降りた者を、同族と見做さない、とも。
だからこそ、サラはあの場所からあたしを逃がしてくれたんだ。
なのに。
──どうして、あたしのことを知っているように……いや、それどころか、探しているように感じたんだろう…。
20年も前にマリージョアを去ったんだ。
あたしは、もう、天龍人とは思われないはず。
ドフラミンゴが"家族"という存在に執着している、ということならば、まだ彼に探される理由は分かるような気がするのだけど。
──その血を絶やさぬために。子孫を絶やさぬように。
サラの日記に書いてあった通り、天竜人がその目的のためにあたしを造ったのだとしたら、彼らにとってあたしは、明らかに用済みの人間のはずなのだ。
あたしはずっと、彼らが汚いと忌避する、マリージョアの外で生きているのだから。
「…それとも、CP0があたしを知っているように思えたのは、あたしの気のせいだったのかな…」