第23章 ゲーム(Ⅱ)
彼女はやや不満げにサボを見上げてから、諦めたように首を振った。
あたしはそんな彼女になにか話しかけようと、あれこれ言葉を探す。突然現れたこのコアラという少女のことがとてもとても気になって。
同じ匂いがするというか、親近感を覚えるというか…。とにかく、仲良くなりたくてたまらないのだ。
歳が近いように見えるのもその理由なんだけど、多分、それだけじゃなくて。
「ま、いいや。大丈夫だった?サボくんに迷惑かけられてない?」
先に口を開いたのはコアラの方だった。
「うん。むしろさっきは助けてもらって…」
「よかったー」
心底ほっとしたように胸を撫で下ろす彼女を見て、あたしはこの人に興味を持った理由に気づく。
──わかった。
この人、"ちゃんとした人"だ!!!
常識はずれの超人ばかりが近くにいたせいですっかり忘れていたけど、コアラの気遣いは、それが決して普通ではなかったことを思い出させてくれた。
「何か困ったことあったら私に言ってね。この人、女性への配慮なんてもの、一切持ちあわせてないから」
遠慮なく隣を指差し、ずけずけと言ってのけるコアラ。サボが何も言い返さないところを見ると、あながち間違いではないらしい。
「そのうえ、全然人の話聞かないし。いつも用件だけ言ってすぐにどっかいっちゃうの」
「それは意外…ではないかも」
さっきまでのサボの様子から、普段からあんな調子なんだということがなんとなくわかった。そして、きっと、このコアラの嘆きも一切響いていないことも…。
「ねぇ、サボくん聞いてる?キミの身勝手で怒られるのは私とハックなんだよ!!あの時だって…」
ガミガミとまだ言い募るコアラを見ていると普段の苦労が窺い知れて胸が痛かったけれど、それが当の本人に全く響いていないとなると一層不憫で泣ける話だった。