第23章 ゲーム(Ⅱ)
「あーーーーー!!!いた!サボくん!!」
突然、静かなフロアに女の子の声が響いた。
名を呼ばれた男はそちらに目を向ける。
「おうコアラ、どこ行ってたんだ?」
「どこ行ってたんだ、じゃない!!!ルフィくんの名前を出した途端、飛び出していったのはサボくんの方でしょ!!すっっっっごく探したんだから!!」
声の主──コアラと呼ばれたその女の子は、瞬く間にサボの元までやって来て、人差し指を突きつけて怒鳴りつけた。短く切り揃えたオレンジ色の髪に、黒いキャスケット帽を被っている。大きな丸い目が特徴的な可愛らしい少女だ。
「仕事を放り出してルフィくんのところに行ったこと、ドラゴンさんに言いつけてやるんだから!」
「悪かったって。だけどほら、交易港はちゃんと見つけたろ。仕事を忘れてたわけじゃねェんだ」
そう言って、ちゃんと探してたよな?と、あたしを振り返る。同意を求められても、あたしはなんと言っていいのやら。
地下が怪しいと言ったのはローだし、その後意外とすぐ見つけられたから「探してた」ってほどでもない気がするけど。ま、ここでそれを言う必要はないか。
あたしはひとまず、サボの後ろからコアラに向かってうんうん、とうなずくことにする。
「むりやり人に言わせるな……って、えーー!?!?」
そこで初めて、あたしの存在に気づいたらしい。コアラはまた大きな声を出し、なぜか口をあんぐりあけたまま固まってしまった。
「…どうしたの?」
あたしはぱちくりと目を瞬く。
なにか驚くところでもあった?
コアラはしばし固まっていたけれど、急に血相を変え、今度はサボの耳をぐいーーと引っ張った。
「いたたたたた」
されるがまま引きずられていくサボ。少し離れたところから、ひそひそ声で問い詰める声が聞こえてくる。