第3章 白と赤
一瞬迷ったけれど、とりあえず教会横の、シスターや子供達が普段生活している(と思われる)建物に向かって足を進める。
マリーゴールド教会でもあんな風に教会の横に建物があって、そこでみんなで暮らしている。たぶんここでも同じような感じだろう。
そう思うのに、相変わらずその建物から人の気配は無い。
そして、歩くうちにだんだんと異臭が強くなってきていることを、認めないわけにはいかなかった。
あたしは建物に近寄って、開いていた窓からそっと中を伺い、
──思わず息を飲んだ。
叫びそうになって慌てて口を押さえる。
喉の奥でひゅっと空気が詰まる音がした。
真っ先に目に飛び込んできた、
赤。
状況を理解する前に一瞬頭が真っ白になる。
次いで襲い来るめまいと吐き気。
酷い有様だった。
部屋の中、あちこちに転がる脱力した子供たち。赤や緑の色とりどりの服から伸びる白くて細い手足はピクリとも動かない。
そして、床一面に飛び散る赤い液体。
テーブルからどろりと滴り、大きな血溜まりを作っていた。
咽せ返るような、血の臭い。
一目で誰も助からないことを悟る。
「一体…なにが…」
震える両手でドアに手をかけようとした時、
──誰かが階段を降りてくる足音が聞こえた。