第23章 ゲーム(Ⅱ)
「───やめろ。退くぞ」
口を挟んだのは、その後ろに立つ別の男だった。おそらく、白い仮面を被った男だ。
「正気か?」
サボと対面していた男が声を上げる。あからさまに驚いたのが分かる声のトーンだ。
「"それ"が何か分かってねェのか?」
「分かってる」
「なら、一刻も早く回収すべきだろう!万が一ドフラミンゴの手に渡ったらどうする気だ…!?」
「そうならないことを願うしかないな」
憤慨する男に対し、白い仮面の男はどこまでも冷静だ。
「奴はただでさえその立場を利用して好き放題してるんだ。今俺たちが回収すれば"あの方"は…!」
「よせ。それ以上は言うな」
サボの目の前にいる男は、どうしても納得いかないようだ。が、言い募った言葉は、やや強めの口調に遮られた。
「"それ"は必ず回収する。今は、その時じゃないと言ってるんだ」
「だが…!」
…なに?仲間割れ?
今ここで?
突然始まった口論に、ぽかんと口を開けてしまう。言ってることはちっとも分からないけど、どうやら男たちの間で意見が食い違っているらしい。
まだ何か言いたそうな男に対し、再び白い仮面の男が言葉を発した。
「思い出せ。ここで革命軍と戦うことは計画になかっただろう。我々がここに来たのは、ドフラミンゴの七武海脱退が誤報だと伝えるためだ。本来の目的を忘れるな」
「それは分かっている。だが…」
「心配するな。"あの方"は、全てご存知だ」
その声には、有無を言わさぬ迫力があった。
「──ゲームはまだ、終わっていない」
その言葉が決定打となった。
サボの向いに立つ男は少しの間黙った。
そして、何を思ったのかそのまま踵を返したのだ。目の前のサボにもあたしにも、突然興味をなくしてしまったように。
拍子抜けするくらい呆気なく、こちらに背を向けて去っていく3人の男たち。呼び止める理由は、なかった。
仮面の男たちはフロアから姿を消してしまうまで、あたしもサボも、一言も言葉を発せなかったのだった。