第23章 ゲーム(Ⅱ)
目を閉じることも忘れて、迫る男の指先を見ていた。これで突き刺されたらどうなるんだろう、と。
──ふと、視界の端にひらりと赤い光がちらついた。
気のせいとも思えるくらいの刹那の閃光。
その直後、
「"竜の鉤爪"!!」
聞いたことのある声がして。同時に、凄まじい爆音と共に、熱風があたしの体を包みこむ。
目の前が急に明るく照らされ、あまりの眩しさに思わず目を細めた。
「あっぶねェ、間一髪」
突然あたしの前に現れた背中から、声がする。
目を見開いてちゃんと確認すると、あたしの前に体を捩じ込むようにして仮面男の攻撃を止めていたのは。
「サ、ボ…?」
「悪ィ、遅くなった」
へらり、と笑みでも浮かべていそうな軽い調子でサボは言う。背中越しではその表情は見えなかったけれど。
「炎……。そうか。あの実を獲ったのは革命軍か」
突然現れたにも関わらず、仮面男に動揺した素振りはない。
「エースの形見だからな…っと、」
軽く返事をしたサボを、仮面男の鋭い蹴りが襲う。サボはそれを体を反ってかわし、後ろで呆然とするだけのあたしを引っ掴んで、一気に飛び退った。
「…おいおい。こんなとこでCP0を相手にする予定は無かったんだが」
あたしを地面に降ろした後、小さくつぶやいたサボ。そして、思い出したようにちらりとこちらを見る。
「お前、ハキは?」
「う…ごめん。つかえない」
「そうか」
それはちと心配だな…とこぼし、サボは仮面男の視線を遮るようにあたしの前に立つ。
「逃げろと言いたいところだが、今お前を一人するのはやめたほうがよさそうだな。アウラ、できるだけおれから離れるなよ」
「う、うん」
正直、立ってるのが精一杯だったから、あたしは大人しく頷く。
相手の狙いが何かはわからないけど、さっきは明らかにあたしを攻撃する気だった。
サボが逃げろとは言わなかったのは、あたしが疲労困憊なのが伝わったからだろう。複数人いる以上、例えサボが足止めしてくれたとしても、他の者に追いかけられたら逃げ切る自信がない。
だけど、このまま3対1で戦って勝てる相手だろうか…?
あたしは少し不安になる。