第23章 ゲーム(Ⅱ)
そこにいたのは、やはり、3人の男だった。
全員、奇妙な仮面を被っている。声がくぐもって聞こえたのはどうやらこれのせいらしい。
あたしは目の前の男たちを一人一人慎重に観察する。
仮面のせいで表情は読めない。
歳も判別できない。
声を聞く限り、性別は多分、男。
身長は…あたしの場合、大抵が自分より高いけれど、それでも随分大きい。内一人は見上げるほどの大男だった。
3人とも、足首まですっぽり覆うほどの白いコートを羽織っている。一目で異様だと分かる風貌。
──集中しなきゃ。
気を抜いちゃダメだ。
だって。
「どうする?確かめるか?」
──こんなに近くにいるってことは、つまり、彼らが気配を消して近づいてきたってこと。
そして、それに、あたしは全く気づかなかったってこと。
周りで伸びている男たちを見向きもしないのは、気にしていないから。それをやったあたしにも、驚いていないから。
彼らは、この惨状に微塵も興味を抱いていない。
これは侮りではなく。
あたしの能力を知らないわけでもなく。
「……殺すなよ」
中央に立つ男がそう呟いた声が聞こえた。左隣の男が、ゆらり、と蜃気楼のように揺らめく。
ハッと息を呑んだ、次の瞬間。
「………ッッ!!」
目の前に迫る、仮面の男。
肌が痛いほどの気迫。
──受け止める?ううん、だめだ。
これ、たぶん、ヴェルゴの時と同じ…!!
びりびりと肌に感じる圧で、数日前の記憶が呼び起こされる。
パンクハザードでヴェルゴに首を絞められた時。
あたしは風のはずなのに、易々と体を掴まれた。
逃げることすらできなかった。
あれと同じ感覚だ。
みんなが"ハキ"と呼ぶ、あれ。
──受け止めちゃダメ。避けなきゃ。
この距離でかわせる?後ろに飛ぶ?…でも。
コンマ数秒の間に幾つかの選択肢が脳裏をよぎった。
だけど、それらを行動に移す時間はあたしには残されていなかった。
「──"指銃"」
歴然とした力の差。
明らかな能力値の優劣。
ただ、揺るぎない現実だけが、そこにあった。
…ああ。きっと、あたしじゃ勝てない。