第23章 ゲーム(Ⅱ)
「…っ、…はぁ…っ」
胸に手を当てて大きく息を吐き、その痛みが過ぎ去ってくれるのをひたすら待つ。
早く回復しなきゃとは思うけれど、頭痛はまだまだ治まりそうにないし、失われた体力もそんなにすぐには戻ってこない。相変わらず、うるさいくらいに内側から激しく心臓を叩く音が聞こえる。
…そう言えば、サボはどこに行っちゃったんだろう?まだこのフロアにいる?もしかして、もっと先に行ってしまったんだろうか。
ふと気になったけど、辺りを見回して探すだけの気力も体力も、今のあたしには残されていなかった。
「…はぁー…っ、はっ…、…っ」
視界に垂れた髪が、呼吸に合わせて揺れるのが煩わしい。だけどそれを掻き分けることすらも億劫で。
思ったより満身創痍な自分に、ちょっと情けなくなる。
さっきまで痛みも忘れるくらい心地よかったのに。その数秒後がこれなんて、あんまりだ。
「──これは、驚いた」
そんな時だ。その声が聞こえたのは。
「あの噂は本当だったのか」
サボじゃない。
知らない、男の人の声。
「まさかこいつ…」
「ああ、おそらくそのまさかだ」
少しくぐもった声。一人じゃない。
複数人…3人だ。
3人の人間が、あたしの前にいる。
声の大きさからして、そんなに遠くない。
多分、数歩歩けば対面する、そんな距離。
──…一体、いつの間に?
こんなに近くに来るまで、あたし、気づかなかった…?
驚きながらも、あたしは平静を保ってゆっくり大きく深呼吸をする。
「ふー…っ、」
そして、ふらふらしながらも、なんとか立ち上がった。
まだ息は整っていなかったけど。
体力も戻っていなかったけど。
膝をついている場合じゃない。
あたしは顔を上げて前を見る。