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マリージョアの風【ONE PIECE】

第23章 ゲーム(Ⅱ)




「…次は?」


まだ。
まだだ。


まだ、楽しみたい。もっと深く。
もうすぐあたしは全部を取り戻しそうな気がするの。


忘れていた感覚を、全部。



一片の隙もなく、みっちりと空気に満たされた世界。完全に調和が取れていて、全てが在るべき場所に収まっている。どんな生き物さえ、その理から外れはしない。


その中で、唯一"揺らぎ"を起こすことができる。
このあたしだけが。


どうしてそんなふうに思ってしまうのか分からなかったけど、そんな気がした。風が、そう教えてくれるのかもしれない。


──ああ、気持ちいい。


あたしの考えをラグなく汲み取り、思うままに動いてくれる風。その動きが心地よい。


こうしたい、という明確な意思が形成される前に、流れが変わり始めるのを見ると、風にも意思があるんじゃ…?と錯覚してしまうほど。



──あたしは風であり、風はあたしなのだ。



改めてそのことに気づく。


力を手に入れた高揚感と全てを意のままに操れる優越感。空気を震わせる悲鳴すら心地よく、まるで優美な音楽を聴いているかのよう。


うっとりと口元に浮かんだ笑みは、これから沈んでゆく男たちの目にはどう映っただろう?ああ楽しい。頭の奥が痛むような気がするけど、きっと気のせいだ。


だってこんなに、楽しいんだもん。


踏み出した一歩が空気を破る。
二歩三歩と歩み、怖気付いて退こうとする男に近寄る。


「どうして逃げるの?そっちから仕掛けてきたのに?」


ささやいた言葉はきっとこの男にも届いている。怯えた瞳に、笑みを浮かべる銀色の髪の女が映っていた。



頭の奥を鈍く叩く痛みはますますひどくなる。だけど、あたしは止まらなかった。



──最後まで楽しませてよ。



これはあたしの感情なのか、風の意志なのか。


体なんていう境界線が不自然に感じてしまうくらい、その時、あたしたちは一つの存在として混ざり合っていた…。





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