第3章 白と赤
ひとまず門の中には入らず、回れ右する。
裏手に回って身を隠すのにちょうどいい茂みを見つけると、その中にうずくまった。
森ってほどではないけれど、植物が生い茂って周りからあたしたちを隠してくれる。
心臓が嫌な風にどくどくと脈打っていた。
落ち着くまで少し待つと、ゆっくり顔を上げる。
「様子を…見に行かないと」
何も問題ないならそれでいい。
さっきの違和感も気のせいかもしれない。
そう思うけれど、ジョナサンを連れていくのはだめだ。
起こさないように注意しながら茂みの中にそっと隠す。上から毛布をかけて、背負っていたリュックも横に下ろした。
心の中で何でもありませんようにと祈りながら、護身用に持ってきた小型ナイフを持った。刃渡り15センチほどだけど、無いよりはマシだろう。
あたしはぎゅっと拳を握りしめてから、教会を見た。
小さい子をこんなところに置いておくのは良くない。数分見て回って、すぐに戻ってこよう。
そう思いながら、そっと門から中に入り、建物に近づく。
やはり人の気配はない。
さっき感じた異臭がだんだん強くなる。
同時にあたしは、疑惑が確信に変わっていくのを認めざるを得なかった。間違いない、これは。
「…血の臭いだ…」