第23章 ゲーム(Ⅱ)
爛々と目を光らせて(これは一体どうして?)向かってくる大男たちを片っ端から吹き飛ばし、時には手足を使って叩きのめしながら、あたしは、あることを思い出していた。
──ついさっき、あたしはロギアの戦闘をこの目で見た。能力を手に入れて間もないはずの、その人の戦い方を。
「サボはどうやってたっけ…。手に、こう…?」
手の中に熱を集めてみる。熱は徐々に渦を巻き、風圧となって近くまで迫ってきていた男を飛ばした。
ちがう。
これじゃ、今までと変わらない。
体の中の力を一点に集めれば、そこから風を生み出すことができる。それは、モネとの戦いの時に実際に試して気付いた。
これを使えば威力は十分。なのだけど。
力を集めるまでにどうしても時間がかかってしまうのが難点だった。
中途半端な状態で放ってしまえば、今みたいに精々一人二人しか吹き飛ばせないし…。
──もっと素早く、もっと簡単に、この風を使いこなすことができれば。
不意に、鋭い剣先が肩を掠める。あたしは思考を止めずにそれをかわす。
──サボは体の中から一瞬であんな大きな炎の塊を生み出しているんだろうか?何も意識せず??
…うん。それも、あるのかもしれない。
革命軍の参謀総長にまで昇り詰めた人だ。
桁違いの格闘センスと肉体。
そして、能力を操る才能。
それらを兼ね備えていれば、何も考えなくてもあれだけの動きができるのかもしれない。
なんてったって、あのルフィのお兄ちゃんだし。
血は繋がってないみたいだけれど。
とにかく、ローやサボやルフィみたいに、あんなふうに、一瞬で能力を使いこなせるようになる人たちの戦い方を、真似しようだなんて思っちゃいけない。そんな神がかったセンスをあたしは持ち合わせてないんだから。
振り下ろされた大剣が、あたしの髪を掠める。短く息を吐き、それを鼻先でかわした。
「…っ」
──だけど。
参考にならない、なんてことはないと思うの。同じようにできなくても、きっとヒントはある。
彼らから学べる何かが、あるはずだ。
お腹に力を込めて、一気に間合いを詰める。
畳み掛けるように鋭い蹴りを二発、三発はなつ。
常に考え続けないと。
あたしに、何ができるのか。
この力と体を使って、どうやって強くなるか。