第23章 ゲーム(Ⅱ)
ふと、さっき交わしたサボとの何気ない会話を思い出す。
『そう言えば、どうしてこの能力が良かったの?』
『なんでだろうな…。無意識のうちに火と相性がいい能力を探していたのかもしれねェ』
確か、彼はそう言ってた。
……火と風は、相性がいいのよね。
それはもちろん、もともと火を生み出すには空気が必要で。風を使ってうまく空気を取り込めば、その分威力が増すからで。
「このくそアマ!!」
殴りかかってきたのは一際図体の大きい男。その後ろに瞬時に移動し、背後から蹴りをお見舞いする。
──周りの空気を利用して…?
「ぐぁっ!!」
正面から壁に突っ込む男。
さらに数人の男が飛びかかってくる。
次々に繰り出される拳や蹴りをすれすれでかわしながら、あたしは考え続ける。妙に頭が冴え渡っていた。何か、とても重要な何かに辿り着きそうな予感がする。
──もし。
あの炎が、サボの体から生み出されるだけじゃないのなら。
例えば、周りの空気をも味方につけて、増幅されるものだったら……?
ふと、つい先日訪れた、炎と氷で包まれた島を思い出した。あの島をあんなふうにしてしまったのは、二人のロギアの能力者だと聞いた。
能力者自身がその場を離れてもなお、燃え続ける炎と、溶けない氷。まるで、あの島だけ構成する物質が変わってしまったみたいに。
「ロギアが最強と言われる理由は、なにも、この体が変化するからってだけじゃないのかも…」
何気なく呟いてみる。あながち間違いではないのでは、という気になった。
──ロギアの真髄は、単に能力者の身体が変わるだけじゃなくて。例えば……そう。
例えば、自然物で溢れたこの世界ごと、味方にすることができる、というものだったら…?
自然現象を取り囲む周りの物質を巻き込んで、変化させてしまえる力、なのだとしたら…?
才能のある者が使えば。
並々ならぬ鍛錬を積めば。
それこそ、この世界の一部の気候を変えてしまうことも、できるのかもしれない…。